失敗する書籍電子化プロジェクトの共通点
はじめに:電子化したのに、なぜ本を開かなくなるのか
「本をPDFにしたのに、結局読まなくなった」
「電子化したはずなのに、探せない・使えない」
書籍電子化や自炊代行を利用した人から、実はよく聞く声です。
本棚を整理し、データも受け取った。
それなのに、そのPDFはほとんど開かれないまま、
PCやクラウドの奥に眠ってしまう──。
この現象は決して珍しくありません。
そして原因は、電子化そのものではなく「設計」にあります。
本記事では、
「PDFにしたのに使われない本」が生まれる理由と、
失敗する書籍電子化プロジェクトの共通点を整理し、
「使われる電子化」に変えるための考え方を解説します。
失敗パターン①「PDF化=ゴール」だと思っている
もっとも多い失敗が、
**「本をPDFにすれば終わり」**という認識です。
確かに、紙の本をスキャンしてPDFにするだけなら、
自炊でもスキャン代行でも実現できます。
しかしPDFは、あくまで“器”にすぎません。
- 検索できないPDF
- ページが傾いて読みにくいPDF
- どこに何が書いてあるかわからないPDF
こうしたPDFは、
「紙より少しマシ」なだけで、
データとしての価値はほとんどありません。
失敗パターン② OCRが不十分、もしくは存在しない
「OCR付き」と書かれていても、
実際には以下のようなケースが頻発します。
- 日本語縦書きがうまく認識されていない
- 数式・脚注・表が文字化けしている
- 検索してもヒットしない
この状態では、
**“検索できる本”ではなく“画像の束”**です。
結果として、
探す → 見つからない → 開かなくなる
という流れが生まれます。
失敗パターン③ ファイル名と整理が破綻している
意外と多いのがこのパターンです。
- scan001.pdf
- book_2024.pdf
- 無秩序なフォルダ構成
どれだけ良いPDFでも、
見つけられなければ存在しないのと同じです。
紙の本は「背表紙」というUIを持っています。
電子化後には、それに代わる設計された整理ルールが必要です。
失敗パターン④「読む」前提でしか考えていない
紙の本は「読む」ものでした。
しかし電子化された本は、
読むだけでなく「使う」ものです。
- 検索する
- 引用する
- 比較する
- AIに読ませる
この視点が欠けたまま電子化すると、
PDFは“デジタル化された紙”で終わってしまいます。
では、使われる書籍電子化とは何か?
使われる電子化には、共通点があります。
- OCRが前提として設計されている
- 検索・再利用を想定している
- ファイル名・分類が決まっている
- 「後でどう使うか」が最初に決まっている
つまり、
電子化は作業ではなく、設計プロジェクトなのです。
Scanbaseが「PDFはスタート地点」と考える理由
Scanbaseでは、
書籍電子化を「PDFを作る作業」ではなく、
**「知識を再利用可能なデータに変える工程」**として扱います。
- OCR精度の設計
- 利用目的に応じたスキャン設定
- 整理・命名ルールの相談
- 法人・研究機関での再利用前提
だからこそ、
「電子化したのに使われない」状態を避けることができます。
まとめ:PDFにしただけでは、本は生き返らない
電子化に失敗する最大の理由は、
「なぜ電子化するのか」を考えていないことです。
- 本棚を空けたいのか
- 検索したいのか
- 知識を再利用したいのか
目的が決まれば、
必要な電子化の形も自ずと決まります。
もし過去に
「PDFにしたのに使わなかった」経験があるなら、
次は“設計から考える電子化”を選んでみてください。

